「TikTokでドラマを見る」というスタイルは、Z世代を中心に日本でも定着しつつあります。しかし、これは単なる若者の一過性の流行ではありません。 先行する中国市場では、すでに映画やゲームに匹敵する巨大産業へと成長しており、日本でも今後数年でビジネスモデルの根底からの変革が起きると予測されています。
今回は、日本No.1のショートドラマクリエイター集団「ごっこ倶楽部」の戦略や市場データを紐解きながら、**「数兆円規模」**と言われるこの市場の未来を予測します。
1. 世界市場は2029年に「8.8兆円」へ
まず、市場規模の予測データを見てみましょう。 市場調査によると、縦型ショートドラマの世界市場規模は、**2029年には約8.8兆円(556億ドル)**に達すると予測されています。
- 2023年:約8,000億円
- 2029年:約8.8兆円(予測)
日本のテレビCM市場規模が約1.8兆円と言われていることを踏まえると、その数倍に匹敵する巨大な経済圏が生まれようとしています。この爆発的な成長を牽引しているのが、ショートドラマ発祥の地である中国と、それに続く米国市場です。
2. 中国市場が示す「2年後の日本」
ごっこ倶楽部を運営する株式会社GOKKOの代表・田中聡氏は、創業当初から中国市場を徹底的にベンチマークしてきました。 田中氏は**「縦型コンテンツにおいては中国が先行しており、中国で流行ったコンテンツが2年後に日本で流行るという流れがある」**と分析しています。
中国で起きたこと
中国では2019年頃からショートドラマが始まり、2021年には本格的なブームが到来しました。現在、中国国内にはショートドラマ制作会社が約600社も存在し、激しい競争の中でクオリティとビジネスモデルが磨かれています。 当初はスポンサー収入(広告モデル)が主でしたが、その後、マンガアプリのように「1話ごとに課金」して視聴するモデルが定着し、爆発的な収益を生むようになりました。
日本への波及
ごっこ倶楽部はこの「2年遅れの法則」を予測し、2021年に活動を開始しました。そして現在、日本でも中国と同様に、無料のSNS動画から、有料の「課金型アプリ」へと市場が移行し始めています。ごっこ倶楽部が2025年にリリースしたアプリ**「POPCORN」**や、先行する「BUMP」などの台頭は、まさに中国市場の軌跡をなぞる動きと言えます。
3. なぜ日本でも「巨大産業」になり得るのか?
中国やアメリカだけでなく、日本でもこの市場が拡大すると確信される理由は、日本の生活習慣とエンタメ構造にあります。
① 「電車通勤」という視聴環境
アメリカのような車社会とは異なり、日本は電車通勤が主流です。田中氏は、**「日本は電車通勤時間が長いため、世界の中でも縦型ショートドラマはより馴染みやすい」**と指摘しています。 移動中の数分間、片手でスマホを持って没入できる縦型ドラマは、日本人のライフスタイルに合致した最強の暇つぶしコンテンツです。
② 「製作費」の課題を解決するモデル
日本のテレビドラマ制作費は1話あたり数千万円程度ですが、世界水準(韓国や米国)では数億円規模が当たり前となり、クオリティ格差が広がっています。 しかし、縦型ショートドラマは「1話課金」というユーザーからの直接収益(D2Cモデル)を確立することで、スポンサーに依存せず、制作費を潤沢に回すことが可能になります。 田中氏は、**「質の高いコンテンツを作り続けるためには、エンドユーザーからの直接的な支援(コンテンツ販売)が不可欠」**と語っており、このモデルこそが日本の映像産業を再興させる鍵になると見ています。
③ 既存IP(マンガ・アニメ)との親和性
日本は世界有数のIP大国です。すでにWebtoon(縦読みマンガ)市場が拡大していますが、ショートドラマはその実写版として非常に相性が良いコンテンツです。ごっこ倶楽部も『シンデレラ・コンプレックス』などのWebtoon実写化を成功させており、今後「マンガ×ショートドラマ」のメディアミックスが加速すると見られます。
4. 今後の展開:流行から「文化」へ
2025年以降、日本でも企業によるショートドラマ活用が一般化し、マーケティングの主流になると予測されています。 NTTドコモやJALといった大企業がすでに参入し、Z世代への認知拡大や売上増といった具体的な成果を上げています。
単なる「バズる動画」から、課金してでも見たい「リッチな映像作品」へ。そして企業のマーケティングインフラへ。 中国市場の動向を見る限り、日本のショートドラマ市場も、数兆円規模のポテンシャルを秘めた巨大産業へと進化していくことは間違いないでしょう。
